センチュリー・プラントにようこそ

言葉と物語、創作小説

2022-01-01から1年間の記事一覧

恥の意識

「恥の意識と無謀な勇気と対象への愛があれば自然と技術は身についてくるものだ」みたいな文章を読んだ気がするのだが思い出せない。村上龍の文章だったはずだ。手元にある限りの村上龍の本をひっくり返したが、どこだかわからない。 「恥」とはなんだと思っ…

小説より

小説よりかは柄谷(行人)さんの書いてるもののほうがはるかに刺激的だし、的確だしね。僕なんかだと、少ない時間で本を読むときに、小説を読んで、ああ、楽しかったって終わるより、柄谷さんを読んで、ムム、こんな言葉があるのかと思う方をとるよ。(坂本…

プライド

絶望した時に発狂から救ってくれるのは、友人でもカウンセラーでもなく、プライドである。(村上龍『すべての男は消耗品である。』角川文庫) 対人支援職をしているが、相手に解決を求められることが多い。私は友人でもカウンセラーですらないので、困るし、…

男の筋肉

男性ホルモンのアンドロゲンにも、蛋白結合作用がある。このため、女性に比べ男性は筋肉質である。(菱沼典子『看護 形態機能学』医学書院) 筋肉質であることが男らしい、とされることが多い。太く固い腕や、厚い胸板にときめく女性は多いだろう。しかし、…

「お前を殺せたらなあ」

男は笑わなかった。おそろしく無表情で、なんだかさっき見た大蟻の顔にも似ていた。そのうえ男は、そんなふうに彼女を差上げたままでこう云った。「お前を殺せたらなあ」(北杜夫『夜と霧の隅で』収録『羽蟻のいる丘』新潮文庫) 男と女、それに女の子だけが…

わくわくしたくない

自分で音をつくるときに、自分でも一生懸命に考えて納得できる理由がないので、何故か分からないんですが、例えばこの音はこうしたいっていうのがありますね。コンピュータを使うと、必然的に、それを一回数字に置き換えることになるわけで、それが安心でき…

好かれること

だれでも人からは好かれたいし、まただれかから好かれることが必要であるが、すべての人から常に愛されたいと思うのは、おとなの態度ではない。(G.バートン『ナースと患者』医学書院) 誰でも人からは好かれたい、というのは裏返しても、誰からも嫌われたく…

たとえもはやこの地上に何も残っていなくても

たとえもはやこの地上に何も残っていなくても、人間は――瞬間でもあれ――愛する人間の像に心の底深く身を捧げることによって浄福になり得るのだということが私に判ったのである。 (ヴィクトール・E・フランクル「夜と霧」みすず書房) 解説には、この本の原題…

偏り

好きな本の文章の一部を引用して書いているが、偏りがあることに気づいた。村上龍関係の本が圧倒的に多い。その他、坂本龍一、北杜夫、中井久夫、斎藤学、浅田彰、柄谷行人、渡部直己、そのあたり。 好きなのだからしょうがないとも思うし、読んでくれる人が…

誰も読んでくれなかったら

誰も読んでくれなかったら小説ではない。(奥泉光『文芸漫談』集英社) 一人でPCでワード(もしくは類似のソフト)で小説をコツコツ書いていて誰の目にも触れなかったら、小説ではないのだろうか? そういった根本的な問題はおいておく。 商業と同人では話が…

書きたくないこと

「私は」で始まるような文章を書きたくないと思うようになった。「私が」「私の」でも同じことである。自分の思いや考えを書くにしても、「私は」「私が」と書き始めなければ意味の通らない文章を書きたくなくなった。見苦しいからだ。おまえの思いも考えも…

「OZ」

「こんな所まで来たんだから、新兵器でも欲しいのかと思ったよ」 「その必要はありませんよ。これだけ戦争が起これば兵器はいやでも進歩する」 「そうとも。ホモ・サピエンスは結局 戦争という手段でしか人工調節も発展もできやしないのさ」 (樹なつみ『OZ…

憎しみのない愛はない

ローレンツは「憎しみのない愛はない。愛のない憎しみはない」ってうまい言い方をするわけです。性による男女の結合なんていうのは、ほんとうにそうだと思います。そういうものすごく矛盾した両義性を持っているんだと思いますね。(村上龍・坂本龍一『EV.Ca…

北杜夫という人

「どうだい、あれの印象は?」Hは夜空に異形な姿をさらしている大ゴシック建築のほうをすかしながら訊いた。「凄いな、たしかに」と私は呟いた。「しかし、ああ徹底的に凄くっちゃむしろ反感を覚えるよ」「僕もそうだ」と、Hは夜の街角に立っている娼婦ら…

模倣と反復の恋愛

いまや恋愛は、メディアを通じて大量消費される幻想を、模倣と反復によって男女間で共有することに過ぎないのではないか。(斎藤環『博士の奇妙な成熟』日本評論社) 恋愛もののドラマは多い。見ないから内容は知らないけれど、よくこれだけラブストーリーが…

偏愛

偏愛は、強烈な好き嫌いを伴っている。世界中の誰もが嫌悪しても、自分はこの作品にシンパシーを覚える、それが偏愛だ。(村上龍『すべての男は消耗品である。最終巻』幻冬舎) どうしても好きな作品というのがある。誰が何と言おうと、この作品が好きだ、と…

頼まれもしないのに

「ネット・デビュー」とかいって。頼まれもしないのに、勝手に書いているだけじゃないかと思うけど。(渡部直己『必読書150』太田出版) ギャー!! 頼まれもしないのに勝手に書く。書く以上は誰かに読んでもらいたいのだろうが、浅ましい気もする。誰も読ま…

なぜ言葉が必要なのか

言葉が必要なのは、相手と自分とが独立した別個の人格であり、悲しいことに決して一心同体ではないからである。(武井麻子『精神看護学ノート』医学書院) 言葉がなくてもコミュニケーションを取ることが可能な場面はありそうな気がする。たとえば、ただ手を…

下手というのは、許せないこと

下手というのは、許せないことだからね。 (村上龍『友よ、また逢おう』角川文庫) 他人の作品を見るとき、簡単に「下手だなあ」と思ったりする。自分が傲岸不遜というわけではなく、シンプルにそう思ってしまうことがある。なのに、自分の作品に関しては自…

読む体力

あらゆるけがれを一身に背負った犠牲が、死せる王として中心0の座につくのである。 (浅田彰『構造と力』勁草書房) かっこいい文章だ。かっこいいけれど、何が書いてあるかぜんぜん意味がわからない。この本はとてもおもしろくてかっこよかったけれど、何が…

眠れぬ夜に

厨二病を気取っているわけでもなんでもなく眠れないだけである。今日は仕事なので5時に起きなければいけないのだが、眠れぬまま午前1時17分だ。2時間以上布団でゴロゴロしてもうアカンと起きてきた。犬はともかく猫も家猫なのでこの時間帯は寝ている(猫は3…

生きる喜び

怒りは欲求が満たされないときの反応だから、怒りの表現を恐れるということは、欲求することそれ自体を恐れるということになります。そこから始まるのが、感情の鈍麻であり、怒りと共に、喜びの感情も消えていきます。欲求し、それを満たすという「生きる喜…

愛という幻想

愛し合う男女といえば、あらぬ幻(イマージュ)を求め合っては空しくすれ違いを繰り返すものの典型ではなかったか。 (浅田彰『構造と力』勁草書房) このブログと同名の拙作「センチュリー・プラントにようこそ」の主人公の賢治は、愛しかたも愛されかたも…

書いている者としての嫉妬

創作小説、と説明文に書いてわざわざ「創作」とつける必要があるのか、と思った。ただ私は同人活動という範囲の中で書いているが、同人の世界では小説と言えば「二次創作」の小説が多数を占めている。「文字書き」といえば、「二次創作」の文章を書いている…